──誰しも人生が真っ暗に思えたり、希望を見出すのが難しく感じられる時があると思います。そんな時、夏背さんにとってどんなものが心の支えになりましたか?
夏背(以後、「夏」):私にとっては、色んな方の作る作品がとても支えになりました。Orangestarさんの音楽もよく聞いていて、今思うと、彼の音楽を通して福音に触れていた部分もあったのかなと思います。あとはやっぱり絵を描くことが何よりの支えだったと思います。絵を描くことで、自分と会話するというか、自分は今何が悲しくて、何が辛くて、何がしたくて、何が悔しいのかを、描いているうちに初めて自分で知ることがよくあったので、当時の私にとっては絵を描くことが希望だったというか、1番大事なことでした。
──絵を描くことが、自分自身と向き合う手段の一つだったんですね。
夏:当時は絵でこうなりたいとか、こういう信条で絵を描いていくとか、そこまで考えて描いていたわけではなかったんですけど、振り返ると結果的に絵を描いていたから巡ってきた機会が沢山あったので、描いていて本当によかったと思います。絵を通して色んな人に出会ったり、色んなことがあって、人生が大きく変わりました。
──夏背さんが福音を学び始めたきっかけは何でしたか?
夏:最初は神様について興味があったというよりは、もし神様がいるなら、どうして自分はみんなと同じように学校に通えなかったのかとか、どうしてみんなと自分の身体は一緒じゃないのかっていう疑問に、納得できる理由が欲しかったんです。あとは、自分が今お願いしてる神様って結局誰で何なのかが知りたかったです。
──どうして自分にこんなことが起こるんだろうとか、どうして神様はこんなに大変な目に合わせるんだろうとかって考えることはなかったですか?
夏:常にそうでしたね。私が行きたかった高校に通ってる同級生を見ると、どうして自分は行けないんだって思っていたし、ピアノや部活を続けている友人を見ると、どうして自分は続けられなかったんだって思っていました。私はそれを叶えてる人と叶えられてない自分をずっと比較していました。 彼と出会ってそこから抜け出した途端に理解したというか、あの経験がなかったら私は、今持ってるものはきっと何も持っていなかっただろうなと思います。 もちろん、教会にも入っていたか分からないし、福音を理解するという点においても、これからどんどん体が治っていって、健康になって普通に暮らすようになっていくという課程においても、その苦しい期間がなかったら、きっとそれを理解することができなかったと思います。病気の期間に学んだことはとても多かったです。
Orangestar(以後、「オ」):出会わなかっただろうね。その期間がなかったら。
夏:うん。その期間がなかったらきっとOrangestarさんにも出会っていなかっただろうし、絵も描いていないだろうし、歌も歌っていなかったと思う。
──福音を学んでみて、何か自分の中で変わったと思うことってありますか?
夏:福音を学ぶと、自分の考え方の元になっているものが、全部そうじゃなくてもいいって気づいたんです。例えば自分と他人を比較しなくてもいいとか、自分を愛してもいいとか、自分を肯定してあげてもいいとか、他人を許してもいいとか、そういう福音の要となってる考え方が、その時の自分とは全部反対で、人を許せなかったし、自分も愛せなかったし、他人と自分を比較してずっと過ごしてたから、すぐにそういう考え方ができたわけではないけど、そう考えられたら凄くいいなと思いました。
──宣教師さんたちから話を聞いて、最初から全てを受け入れることができたわけではないと思うんですけど、それらを信じてみたいと思った理由って何でしたか?
夏:以前夫が人間みんな何かしらを信じて生きているって言ったんですよね。それが私にとっては衝撃で、私は今何を信じて生きているだろうと思った時に、きっとそれはポジティブなことじゃないなと思って。どうせ何かを信じて生きるなら自分が信じたいと思ったことを信じようと思ったのがきっかけだと思います。私がこうだったらいいなと考えていたことと、福音は重なる部分が多かったので、次第に受け入れるようになりました。
──「こうだったらいいなぁ」っていう、やっぱりそれは希望が先にあるってことですよね。
夏:そうですね。本当は、初めは少し抵抗があったんですけど、根本に「選択の自由」という考え方があるというのが大きかったです。
──バプテスマを受けて、その前と後ってどんなことが一番違いますか?
夏:考え方が前よりポジティブになったと思います。あとは人にも自分にも前より少し優しくなれたと思います。人が自分の力以上に速く走ることは要求されていないっていう聖句があるじゃないですか。私はよく人と比べて自分を追い込みすぎてしまうことがあるんですけど、そういう私の考え方を優しく変えてくれた聖句がいくつもあって、読んでるうちに私は私のペースで良いんだと思えるようになりました。心にも少し余裕ができたと思います。
──バプテスマから1年経って神殿で結び固めを受けたんですよね。神殿に入ってみてどうでしたか?
夏:神殿に入る前に色んな方から神殿について話を聞いて、素晴らしい経験だったって皆さん言っていて。神殿に入る前は自分も同じように感じられるかすごく不安だったんですけど、今までで一番強い証を得ることができました。 私は改宗者だから、もともと福音を知って生きてきたわけでは無いけど、1年前にバプテスマを受けて、彼と結婚して、教会員になって神殿に入ってっていうのが全部ちゃんと正しかったっていうのをすごく感じました。
──ありがとうございます。最後の質問です。「誰もが誰かの祈りの答えになることができる」っていうメッセージも、このプロジェクトで伝えたいと思っています。神様って私たちの祈りに必ず答えてくださるけれど、多くの場合周りの人を通して、答えてくださることがあると思うんですね。だから自分自身が誰かの祈りの答えになったり、あるいは誰かが祈りの答えになったり、ということがたくさんあると思うんですけど、それについて何か感じるものがもしあったら教えてくださいますか?
オ:私は今までも誰かのためとか誰かの祈りの答えとかってそんなに考えて活動していたわけではないんですけど、それに励まされたって言ってくれる人たちがいて、そういう時にこれはきっと自分の力じゃないなっていう感覚が何となく常にあって、でもその作品が誰かの力になっているっていうのを知るとすごく嬉しいし、作って本当に良かったなと思います。彼女(夏背)についても、神様が本当に全ての人にとっての神様で、彼女のことも教会に入る前からずっと知っていて、彼女にも何か役割があって、私はそのための手助けをしたっていうことだと思ってるので、なんでしょうね、それぞれが何もかもできなくても、それぞれができることを伸ばしていくっていう、それが大切だなぁって思いますね。
──ほんとですね。神様からあなたの役割はこれってはっきり言われるわけではないですけど、自分の好きな事だったり、あるいは何か病気や試練だったり、色んな状況の中で自分に出来ることを精一杯やっているとそれが後になって思わぬ形で誰かの助けになることがありますね。
夏:神様は私が福音を知る前から見てくれてて、教会に入る前の、お祈りって自分は思ってなかったけど、神様に聞いたこととか質問したこととか、希望が欲しいとか、そういう願いをずっと持ち続けていたら、Orangestarさんと出会って、そしたら彼からもっと福音について学んで、神様について知って、自分が今まで思ってた疑問を解決してくれて、教会に入る前にしてたそのお祈り、どうしてこうなったんですかとか、私はどうなるんですかとか、そういうことを全部神様が見てて知ってくれていたと知ることができたので、なんだろう、神様は一人一人を見て一人一人に試練を用意して、それを越えたら与えてくれるものを準備してくれていて、それを得たら私も嬉しいけど神様も嬉しく思ってくれているんじゃないかなと思います。
──本当にそう思います。
夏:Orangestarさんもさっき言ったけど、その時自分にできること、やりたいことをできるだけ、可能なだけやり続けるとそこから得られるものってすごくたくさんあると思うので。
オ:うん。
夏:あはは。やりたいことや、できることをやるのが大切だね。
──本当にそうですね。
(完)